私の大学時代の研究室は、普通の「ビル」に入っていて、1年間いても、自分の研究室以外で何が行われているのか、全く分かりませんでした。 しかし、研究室はそれではいけません。 研究室はただの勉強する場所ではなく、他分野の人と横断的にコラボしたり、企業や投資家とミーティングできる場所であ...

大学・研究系建築の設計コンセプトと事例

 

私の大学時代の研究室は、普通の「ビル」に入っていて、1年間いても、自分の研究室以外で何が行われているのか、全く分かりませんでした。

しかし、研究室はそれではいけません。

研究室はただの勉強する場所ではなく、他分野の人と横断的にコラボしたり、企業や投資家とミーティングできる場所である必要があります。

今日は、そんな新しい学びの場の設計コンセプトと事例を紹介します。

課題、コンセプト、卒業設計で役立ててもらえばと思います。

コンセプト1. 教室同士を見えるようにしてみる

ベンチャー企業の創設ストーリーを読むと、コラボは計画的に起きるのではなく、

結構な割合で偶然発生するものです。そのためには、まずお互いが何をしているのか、見えないといけません。


どうすればいいのでしょうか?

まず参考になるのが、「桐朋学園大学音楽学部調布キャンパス」。2016年に、建築学会賞を受賞した作品です。

音楽大学は、普通、防音のために、牢屋みたいに分厚い壁で仕切られていますが、この建築は、ガラスで仕切られています。


防音は、個室の間に廊下を渡すことで達成しているのです↓



もう一つ参考になるのが、千葉学さん設計の「工学院大学125周年記念総合教育棟」。

数棟に分かれているのですが、棟同士をわざと近づけて、他の教室を覗けるようにしています。

これによってできた、建物の間にできた細い通りも、下町のような良い味を醸し出していますよね。


コンセプト2.実際に行き来できるようにしてみる

見えるだけでなく、さらに一歩進んで、実際に学科を越えて行き来できるようにしてみませんか?

それが、SANAA設計の「ロレックスラーニングセンター」。

この「ワンルーム」の中に、カフェ、自習室、レストランが全て入っています!



学生が、機能や学科を横断して交流できるようにするため、壁は極力使わずに、起伏する床と中庭によって、視線や騒音を遮っています。


お互いの気配を感じながら、干渉しあわない空間に仕上がりました。


コンセプト3. 周辺環境に溶け込むようにしてみる

立派で入りづらい建築ではなく、自由に中を見られたり、お茶を飲みに行ける研究室にしてみては?


それが、藤本壮介さん設計の「ポリテクニークスクールラーニングセンター」。

平面図で分かるように、外部の木々が内部にまで染み込み、その中を階段が縫うように上下階をつないでいます。



この階段は、学習スペースや、ミーティングスペースとしても機能します。


こういう、外と中をつなげる「中間領域」を作ることで、普通の研究室よりも入りやすく、「長くいたい」と思える空間になったのではないでしょうか?

 
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