以前、「建築を作るときは、いきなり図面を描くのではなく、鳥になってボリュームを考えた方が良い」と書きました。 (参照: 建築のボリュームスタディの方法 ) 今日は、その時に役立つ「 ボリューム操作の手法 」を紹介します。 もちろん、これですべての建築が作れるわけではありませんが、...

建築空間の基礎知識2:ボリューム操作編

 

以前、「建築を作るときは、いきなり図面を描くのではなく、鳥になってボリュームを考えた方が良い」と書きました。
(参照:建築のボリュームスタディの方法)


今日は、その時に役立つ「ボリューム操作の手法」を紹介します。


もちろん、これですべての建築が作れるわけではありませんが、基本形を覚えてからの方が、 スムーズに創作ができます。


コルビジェもボリュームで建築を考えていた

このスケッチを見たことがありますか?

コルビジェが、自分の代表作4作をダイアグラムにしたものです:
それぞれ、
1. ラ・ロッシュ邸
2. シュタイン邸
3. ベゾー邸
4. サヴォア邸
を表しています。

1は、いくつかのボリュームをつなげています。

2は、一つの立方体にすべての機能を詰め込んでいます。

3は、フリープランと呼ばれ、構造体を決めたあと、自由に間仕切り壁を決めています。

4は、上の方法を組み合わせています。

この中で、コルビジェは、「1と3は簡単、2は難しい」とメモしています。

つまり、有名建築家でも、ボリュームで建築を捉えていたのです。


では、せっかくなので、コルビジェが簡単だと言っている1の方法について、他のバリエーションを見ていきましょう:




ボリューム操作の手法1:足し算をする



機能ごとに「箱」を作ってから、つなぎ合わせて1つの建築にします。


この時、ただくっつけるではなく、重なった場所をデザインして、面白い空間にするといいでしょう。


これも足し算建築。よく見るのではないでしょうか↓




箱の形は立方体以外でも構いません↓





ボリューム操作の手法2:引き算をする


整った概形を作ってから、その一部を削りとる方法です。

最もよく使う手法で、みなさんも無意識に使っているでしょう。

この削られた部分が、庭や風、光の通り道になります。


有名な引き算建築が、住吉の長屋。

南北に細長い敷地なので、真ん中に中庭を作ることで、北側まで光と風を引き込んでいるのです。


複数の中庭を掘ることもできます。中庭の大きさや形を変えて、 違う用途を持たせても面白いでしょう↓





ボリューム操作の手法3:挿入する



大空間に小さなボリュームを差し込む方法です。
例えば、美術館にカフェや特別展示スペースを挿入するのです。


例えば、国立新美術館。逆さの円錐を大空間に挿入しています↓



リノベーションプロジェクトでもよく見かけます。MADの北京胡同泡プロジェクト↓

中国の伝統住宅のリノベーションで、機能を持った泡状の金属の部屋を挿入しています。



ボリューム操作の手法4:折り曲げる



スラブがくきくき曲がって、壁になったり、スラブになったりする方法です。

折り紙を連想させるためか、軽やかな建築になります。全て閉ざさずに、テラスなど半屋外空間を作るといいでしょう↓



平面を作ることもできます↓




ボリューム操作の手法5:スライドする



ボリュームをスライドさせて建築を作る方法。

建築に動きが生まれるうえ、屋上庭園や半屋外空間ができるので、空間に変化が生まれます。

難しいのが「上下の導線」。階段やエレベーターの位置を決めてから、ボリュームをスライドさせるといいでしょう。

有名なのが、SANNAのNew Museum of Contemporary Art。



横にスライドさせることもできます↓




住宅やオフィスなら、もっと細く分割してから、スライドさせてもいいでしょう↓




一部を切ってから、スライドさせれば、建築の高層階にも屋外空間ができます↓





ボリューム操作の手法6:回転させる


ボリュームをひねって建築を作る方法。

例えば、VitraHaus展示館。同じ形のボリュームを積み重ねて、ひねっています↓





ボリューム操作の手法7:反復する


1つのユニット(モジュールと呼ぶ)のコピペで作られた建築。

伊藤豊雄さんが結構この手法を使っています↓

(上)台中メトロポリタンオペラハウス
(下)a f a s i a


モジュールの大きさや、位置を変えることもよくあります。Hannae Forest of Wisdom↓


いかがでしたか?種類が多すぎて混乱したのではないでしょうか。実践を積みながら、少しづつ覚えていけばいいと思います。

少なくとも、「建築のボリューム操作の方法は動詞で表せる」ことだけは覚えてくださいね。
 
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